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オカンの酒とヒヤの酒
第3話

オカンの酒とヒヤの酒

最近、「酒はヒヤの方がうまい」と言う人が増えてきているような気がします。
昔は、日本酒というとオカンで飲むのみ方が、ほとんどだったはずですが、現在は半分くらいヒヤで飲む方がいらっしゃるのではないかと思われます。

この頃の日本酒は解かりやすさを意識してか、極めつけのお酒になるほどカプロン酸という種類の吟醸香の強いタイプのお酒が多く見られます。
これらのお酒はオカンにするとバランスが崩れるので、それが、よい酒はヒヤでというスタイルを生み出しているのかもしれません。

また、缶コーヒーにしても、缶入ウーロン茶にしてもすべて昔はホットで飲んだはずなのに、現在ではほとんど「ヒヤ」で飲まれるのを見ると、現代の流れがコールドなものを求めているのかなという気がします。
かくいう私も個人的にはヒヤで飲むことが多いのですが、オカンの酒も好きです。

オカンは絶対ダメという人がたまにいますが、これはおそらくおいしいオカンのお酒を飲んだことがないのだと思います。本当にオカンに向いた淡白な香りをしっかりと持つお酒をオカンしたときの穀物系のふっくらとした香りの良さというのはヒヤでは味わえない感覚です。

しかし、世の中にはオカンしてもおいしい極めつけのお酒というのは、少ないのが現状だと思います。造り手の立場から言いますと、正直需要が少ないからです。

造り手も消費者も含め、ある程度吟醸酒の華やかな世界を卒業してしまわないと、次の新しい日本酒のステップには踏み出せないのではないかと私は思っています。日本酒の世界は、考える以上にまだまだ、深い部分が隠れているのです。

(専務 田中隆太)