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活性炭濾過の話
第7話

活性炭濾過の話

清酒の活性炭濾過については知られているようで、意外と知られていないのではないかと思います。蔵で搾ったばかりの香り豊かな搾りたての生酒を飲んだことのある人は、普通の酒になるとなぜそれがごくあたりまえの風味の酒になってしまうのかと、疑問を感じたことはないでしょうか?

お酒の製造工程で風味に影響を与える要素はたくさんありますが、とくにはっきりと差が表れるのが活性炭濾過のやり方です。「水尾のこだわり」(リンク)でもふれていますが、活性炭濾過は酒の悪い香味を取り去る効果がありますが、同時に良い香味も大きく取り去ってしまいます。
欠点もなくなるが長所も減るといった具合です。香味豊かなしぼりたて生酒が、ごくあたりまえの酒になってしまう理由の多くが活性炭濾過にあります。

活性炭濾過というのはよく水の浄水器についているあれを、大きい規模でやるものと考えてもらっていいと思います。

製造工程のなかでは3段階の使用段階があり、
1回目が生酒を搾った後、生酒のまま行ないます。
2回目は貯蔵タンクへの火入れ(熱処理してタンクへ納める)時、「はりつけ」といってタンクのなかへ直接炭素を投入してしまうやり方です。これは後で濾過により炭素を取り除きます。
3回目は出荷前に、貯蔵タンクから出した酒に対し、熟度の調整に使います。
3回に分けるのは、より少量で効果をあげるためには、一度に行なうより何回かに分けたほうが良いからです。

なぜ活性炭濾過をするのか、搾ったそのままで良いのではないかと思われるでしょうが、次のような問題があります。

  1. 搾ったそのままだとお酒に色があります。もちろん自然な色で、その昔には酒は山吹色といわれており、香味には直接関係ないのですが、視覚的に、ここ最近の過去の常識として酒造業界が提供してきた酒が無色であることから、色があると劣化しているのではないかと思われがちです。視覚的イメージを良くするために活性炭を使います。
  2. 搾ったそのままだと豊かな香味がある一方、酒の後味などに雑味が認められる場合が多くあります。これはモロミでの製造過程に問題があった時や、もともとの原料米が低精白だった時などに起こります。搾りたての時点では新鮮な風味にカバーされて目立たないのですが、貯蔵を経た後、雑味が浮いてくるため、活性炭濾過により除去します。
  3. タンクに火入れ後、夏を越して貯蔵された酒は老香(ひねか)という劣化臭がのってきます。この老香を取り除くために炭素濾過を行ないます。

以上のような話が、一般的な活性炭濾過の話ですが、最近は最先端の部分で違った動きも出てきています。それは、活性炭濾過は行わないという流れです。

  • 色は自然の色であり、もともとあるものとして気にしない
  • 雑味は精米や製造工程をていねいに行うことで出さない
  • 貯蔵は冷蔵貯蔵を行なうことで老香をださない

などの改善により、活性炭濾過を廃するという考え方です。

一概に活性炭濾過が悪いわけではありませんし、それにより、より良い酒質を提供することも可能です。
しかし、前述しましたとおり、活性炭を使うことで文句をつけられない酒にはなるが、優秀な点数をつけることもできない酒になってしまう危険性をはらんでいます。活性炭の使い方はその蔵のポリシーを大きく反映する部分であるともいえます。

(専務 田中隆太)