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良酒醸和(りょうしゅわをかもす)
第9話

良酒醸和(りょうしゅわをかもす)

「和醸良酒」(わじょうりょうしゅ)とは、誰がつくった言葉なのでしょうか。最初聞いたのは有名な醸造マンガの様な気がしますが、それもどこかからの引用かもしれません。

意味は「人の和が良い酒を醸す」というのが、一般的な解釈だろうと思います。

酒造りというのは杜氏1人の力で決してできるのもではなく、並行して行われる作業と交替勤務の中で、それぞれの蔵人がそれぞれの役割をきちんとこなして、また、こなす以上に杜氏と同じ考えと責任を理解して酒造りにたずさわった時に可能になると考えています。
そういう意味で、確かに、人の和が良い酒を造るのだと言えると思います。

和から良酒、逆もまたあり

和によって、良酒が醸される。でも、その和はどうやって造るのでしょうか?
私が蔵に戻ってきてから、水尾山への水汲みをはじめた頃、当時の社長の反対を無視して、昼休みに自分で水くみに行っていました。吟醸造りでは、杜氏とけんかをしたり、社員ともいざこざしたり…。
それでは「和醸良酒」どころではない。心にあるのは、「良い酒を造らなければなにもない」という強い思いでした。 

その年の4月、水尾山の水で作った酒が、今までとれなかった鑑評会の賞をとりました。喧嘩していた、杜氏と苦虫をつぶしたような顔で握手をしました。
この時から何かがかわって、すべての人の和がみるみるうちに出来上がっていったような気がします。

「良酒和醸」(りょうしゅわをかもす)と、その後、思ったものです。良い酒は和を醸す。そして、和が、また良い酒を醸す。このくり返しが、今の「水尾」の品質をささえていると、今ははっきりと言うことができます。

良い酒は、良い造り手と作り、良い売手を集め、良いお客様を集めます。そして、その人たちの和が、また良い酒を造り出すエネルギーになるのだと思っています。

(社長 田中隆太)