よみもの
第2話
「辛口の酒」って何だ!
よく「この酒は辛口の酒だからいい」と言う人がいますが、同じ「辛口」と表現しても、人によって違う意味だったりすることがけっこうあります。たとえば…
- 糖度の低い酒を辛いと言う人
- にが味のある酒をそのビター感から辛口と言う人
- 香りのある酒の飲みやすさを辛口と表現する人
- やわらかい味わいを辛口と表現する人
- 男性的なごつごつした酒を辛口と表現する人
- 味わいが多いから味が重く甘口と言う人
- 味わいが多いから刺激が多いので辛口と言う人
- 飲んだ後にぐっと来るおし味があるため、辛口と表現する人
- 後味がさらリとしているから、辛口と表現する人
つまり、全く逆の意味だったりすることがあるのです。どうやら 甘口、辛口という区分というのは、なんとなくわかるのですが、正確な区分ではないような気がします。2つに分ければ、簡単なのですが、味覚の世界というのは決して2つに分けられるものではないですし、単純に分けてしまうのは面白くないと思います。
辛口・甘口ではなく、自分の言葉を探してみる
一時の辛口ブームから、今なお辛口の酒を下さいという人がいらっしゃいます。私は、辛口の酒が欲しいとおっしゃる方にも、まず飲んでみて下さいと言います。自分が美味しいと思うものが美味しいのであって、人が美味しいというから美味しいというのは間違いです。
辛口でも重厚な酒。甘口でもさらりとした酒。というのがこの世には存在します。本当に求めている「辛口」または、「甘口」というのは、いったいどういう酒なのだろうかと、もう少し考えてみると、さらに深い日本酒の世界が広がってくるのです。
(専務 田中隆太)