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脇役の酒「水尾」
第4話

脇役の酒「水尾」

日本酒を飲むとき皆さんはどうやって飲んでいますか?

ご飯を食べる前に飲む人、食べながら飲む人、いろいろいると思います。私は食べながら飲む方です。どうも何かあてがないと寂しくて飲むことができません。
たとえば塩辛ひとつでもいい、つまみがないと楽しく飲めません。でも、塩辛の替わりにハンバーグやクリームスープでもいけちゃいます。飲む酒は少し変えますが。

日本酒は主役か、脇役か

どうも、香りの高い大吟醸酒に近ければ近いほど主役となり、香りの控えめの酒になればなるほど脇役となるようです。

「水尾」の目指すところはひたすら脇役です。しかし、味のある、時には主役をくってしまいそうな脇役を目指します。
ところがこれが難しい。
なぜなら主役を取れない役者は世間からの評価も受け難いからです。そして派手にしすぎると終始主役をくってしまい、舞台を台無しにするからです。

吟醸系の酵母と発酵力のある水で造った、飲み応えのあるドンとした酒は主役になります。一口飲んだ時は確かに美味しいと思うでしょう。しかし2杯目からはもうごちそう様となる、ステーキのような酒でもあります。
「水尾」の目指すのはあくまでさわらない「水の如し」酒、料理の旨味を引き出しながら何杯でもすいすいと飲める、上等な白身魚のようなお酒です。

それゆえ、「水尾」は吟醸酵母ばかりを使うことを良しとしません。そして使う水は「水の如し」を実現できる軟水を使います。さらに、酒は日常的なものであるべきというのが信念です。
「あたりまえの人があたりまえに飲む酒こそ本当の地酒」という考えのもと、派手でない中でいかに上質なものを追求できるかが勝負だと考えています。

(専務 田中隆太)